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 アルテミスはぼんやりと考えた。 『案外、カツラギは孫に優しいのかもね』  ゆっくりと歩いているうちに、いつの間にか、カツラギの屋敷の近くに来ていた。 「アルテミス!」  名前を呼ばれ、アルテミスはハッとした。カツラギ邸のゲート前でレイネが手を振っていた。レイネのそばに、数人のガードが立っていた。  レイネのすぐ横には憮然とした表情のリッチーが立っていた。ほかに三人の男たちは警護に集中しているせいか、アルテミスには目を向けなかった。  近づいていくと、レイネが微笑んだ。 「アルテミスでも新しい学校は心配なのね」  アルテミスがぼんやりしていたのは転校の緊張のためだ、とレイネは考えたようだった。アルテミスは話を合わせた。 「初めての学校だと、やっぱり少しは緊張するよ」 「そうよね。私もそう」  アルテミスはリッチーに尋ねた。 「カツラギさんとヒューは」 「カツラギ氏は仕事で出かけられました。隊長は同行しております」  レイネがいるせいか、ぞんざいな口調ではなかった。 「それで、アタシはどうすればいい」  アルテミスはフロートチェアに腰掛けたレイネを見た。 「毎日抱っこして行くの?」  レイネはクスクス笑った。 「私はその方がいいけど。迎えが来るわ」  待っていると、☆の中に天使が飛んでいる校章をドアに描いたエアカーがやってきた。ティタニアでは金持ちのが通う学校として知られる、ジュニアハイスクールとハイスクールがあるスターチャイルド学園のマークだった。  車両はレイネが狙われた時に乗っていた装甲車両と同じタイプだった。リッチーはドアを開け、ドライバーに話しかけた。 「連絡はいっていると思うが、お二人を頼む」 「承知しております。お任せください」  ドライバーと少し話をしてから、リッチーはレイネのそばに戻った。  リッチーがレイネに声をかけた。 「アルテミスさんにフロートチェアの操作をお教えしますので、お嬢様は先に乗ってお待ちください」  レイネをエアカーの中に移し、リッチーはドアを閉めた。アルテミスを見て、今度はぞんざいに言った。 「一度しか説明しないからな。しっかり覚えろよ」  リッチーが接続部の幾つかをひねると、フロートチェアは大きめの旅行ケースほどになった。 「よくできてるね」 「まぁな。覚えたか」 「サブメモリに記録した」  リッチーが顔をしかめた。
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