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アルテミスはいまいましそうに言った。
「どうせ、アタシは外の生まれだ。それでも、そんなことは知ってる。歴史で習った」
アルテミスは舌打ちしてジャベリンを戻した。ヒューがアルテミスに近づいた。
「で、お嬢ちゃんは何をやってるんだ」
「アタシはシビリアンポリスのアルテミス・ヌール。バカどもの事故処理をやってる」
「ユラナスの警官は子供でもできるのか」
「そのうち、わけを教えてやるよ。今はそれどころじゃないんでね。報告しなきゃならないから、そこで待ってろ」
「警察へ、か」
「ほかのどこに報告するんだ」
ヒューが慌てた様子を見せた。
「ちょっと待ってくれ。相談がある。とりあえず、この場から抜け出したい」
アルテミスはヒューを睨んだ。
「朝っぱらから、これだけのことをして逃げるのか」
「俺たちが好きでやったわけじゃない。あとで俺が出頭すればいいだろう。お嬢様をわずらわせたくないんだ」
「お嬢様か」
アルテミスは笑った。
「いいご身分だな」
「そういう身分なんだ」
アルテミスが振り返ると、少女は黙って二人を見ていた。アルテミスは心配そうな少女の表情を見て、大きなため息をついた。
「いいさ。この子がカーチェイスをしたわけじゃない。爆発物を持ち歩いていたわけでもない。強化弾を撃ったわけでもない。その通りだ…… ポリスセンター、どうぞ」
サブモニタが開き、金髪をカールした女性が映し出された。
「シティポリスセンター。シビリアン担当のファル・ラザードです」
「こちら、CP23277、アルテミス・ヌール」
「おはよう、アルテミス。どうしたの」
「バスから連絡が行ってる? ロアータウン七番街のカーチェイスの現場に出くわしちゃって。けが人はいないけど、ドライバーは死亡。被害者二名の身柄を確保。犯人については」
アルテミスは口を閉ざした。
「どうしたの?」
「映像を送る。でかい虫を潰した」
「虫?」
ラザードは形の良い眉をわずかに寄せた。アルテミスから送られた画像をラザードは照合して、息を呑んだ。
「BB! なぜこんなものが」
ラザードから転送されたデータをデータを見て、アルテミスは顔をしかめた。
「BB? 軍の兵器?」
「バトル・バグス。戦時中の連邦が開発したロボットの一種。これは偵察タイプね」
ラザードの顔が引きつっていた。
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