1

8/9
前へ
/108ページ
次へ
 アルテミスが首をかしげた。 「大戦時の軍の偵察用ロボット? ショックガンが効かなかったわけだ。ジャベリンを防げるほどの装甲じゃなかったけど」 「今の技術と比べれば、たいした装甲じゃないわ。それでも軍の兵器よ。そんなものが、なぜティタニアにあるの?」  ラザードがいぶかしげに言った。 「すぐにジャベリンで破壊して正解だったわ。応援を送る。まだ戦闘中?」 「応援はいらない。調査班だけでいい。それでね。被害者の一人は……」  アルテミスは少女に尋ねた。 「名前は」 「葛城麗音。レイネ・カツラギです」  アルテミスはうなずいた。 「被害者の一人の名前はレイネ・カツラギ。もう一人はヒュー・マッケイン。今日の朝、テラから来たらしい」 「ちょっと待って…… 了解。確認したわ」 「早いね」  ラザードの返事に、わずかな間があった。 「腕がいいからよ」  ラザードは平静に話しているが、アルテミスは声の変化を聞き逃さなかった。アルテミス自身も気づいたことを悟られないように、注意しながら話した。 「レイネ・カツラギを家に連れて行きたいんだけど。あとでマッケイン氏が事情聴取に応じるって言ってる。それでいい?」 「了解です。それでいいわ。自宅までの護衛を、お願いするわね」  アルテミスは顔をしかめた。 「遅刻どころか、欠席かも」 「学校には連絡しておいてあげる。午前中は休校ね」 「それはどうも」  アルテミスの気のない返事に、ラザードはようやく笑みを戻した。 「ロボットの件も調べておくわ。何かあったら連絡する」  アルテミスは通信を終えた。 「あんた、有名人だね。即決で、この場を離れてもいいってさ」  レイネは恥ずかしそうに頬を赤らめた。 「私が有名なわけじゃないの。おじい様が有名なの」 「そうなんだ。じゃ、行こうか」  レイネは困ったように眉をひそめた。 「ええと」 「どうした。腰でも抜けたのか」 「足が悪くて。歩けないの」  アルテミスは絶句した。 「ああ…… 分かった」  アルテミスはヒューを見上げた。 「この子はアタシが抱いていく。もし、戦闘になったら任せるけど、それでいい?」 「構わんよ。すまないな」  アルテミスはヒューのそばに寄って、小声で話しかけた。 「地球にはサイボーグ化とかDNA治療の技術がないの?」 「そうじゃないんだ」  ヒューも小声で答えた。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加