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アルテミスが首をかしげた。
「大戦時の軍の偵察用ロボット? ショックガンが効かなかったわけだ。ジャベリンを防げるほどの装甲じゃなかったけど」
「今の技術と比べれば、たいした装甲じゃないわ。それでも軍の兵器よ。そんなものが、なぜティタニアにあるの?」
ラザードがいぶかしげに言った。
「すぐにジャベリンで破壊して正解だったわ。応援を送る。まだ戦闘中?」
「応援はいらない。調査班だけでいい。それでね。被害者の一人は……」
アルテミスは少女に尋ねた。
「名前は」
「葛城麗音。レイネ・カツラギです」
アルテミスはうなずいた。
「被害者の一人の名前はレイネ・カツラギ。もう一人はヒュー・マッケイン。今日の朝、テラから来たらしい」
「ちょっと待って…… 了解。確認したわ」
「早いね」
ラザードの返事に、わずかな間があった。
「腕がいいからよ」
ラザードは平静に話しているが、アルテミスは声の変化を聞き逃さなかった。アルテミス自身も気づいたことを悟られないように、注意しながら話した。
「レイネ・カツラギを家に連れて行きたいんだけど。あとでマッケイン氏が事情聴取に応じるって言ってる。それでいい?」
「了解です。それでいいわ。自宅までの護衛を、お願いするわね」
アルテミスは顔をしかめた。
「遅刻どころか、欠席かも」
「学校には連絡しておいてあげる。午前中は休校ね」
「それはどうも」
アルテミスの気のない返事に、ラザードはようやく笑みを戻した。
「ロボットの件も調べておくわ。何かあったら連絡する」
アルテミスは通信を終えた。
「あんた、有名人だね。即決で、この場を離れてもいいってさ」
レイネは恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「私が有名なわけじゃないの。おじい様が有名なの」
「そうなんだ。じゃ、行こうか」
レイネは困ったように眉をひそめた。
「ええと」
「どうした。腰でも抜けたのか」
「足が悪くて。歩けないの」
アルテミスは絶句した。
「ああ…… 分かった」
アルテミスはヒューを見上げた。
「この子はアタシが抱いていく。もし、戦闘になったら任せるけど、それでいい?」
「構わんよ。すまないな」
アルテミスはヒューのそばに寄って、小声で話しかけた。
「地球にはサイボーグ化とかDNA治療の技術がないの?」
「そうじゃないんだ」
ヒューも小声で答えた。
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