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この愛を成就させる事はできませんし、するつもりもいたしません。もし、もしこの私の愛が成就してしまえば、彼は全てを失います。彼の唱えた宗教はそういうものでございます。私という欠点とともに何も無くなってしまうのです。そんなことは私は許せません。ええ、許せませんとも。ですから私の彼への愛情はここだけのお話でどうかお願い致します。
そうです、申し訳ありません。心を癒やすお仕事であるカウンセラーの貴方の仕事とは外れてしまうかもしれませんが、
私は今日になって重大な彼の欠点に気づいてしまったのです。それは彼も人であること。
生き物として死ぬということはいつか起こりえてしまう悲しい運命でございます。でもそんな欠点が彼にあって良いと思いますか?いいえ、
そんなことはございません。彼にはそのような欠点は似つかわしくはございません。だからこそ、今日ここにこさせて頂いたわけというのは、
いかに私が彼を愛しているか、その為には命などなげうっても構わないということを早急にお伝え申し上げたくここにまいりました。
早口で話してしまい申し訳ありません。大丈夫です、精算は行えますから。どうかこの銀貨30枚をお手にとっていただきたい。
そしてこのことはどうか、ご内密にお願いいたしたい。なんせ私は明日も明日。
彼として処刑台にのぼり、彼の死という欠点を補う為にこのように私の死を利用して、
彼に不死性を与えるのですから。そうすることで彼は欠点である死を乗り越えて
完璧な存在として半永久的に語り継がれるに違いありませんとも。
貴方もそうお思いでしょう?大丈夫です。明日の今頃には彼は死にますが、
その後、彼は生き返るのですから。えぇ?私の名前ですか。
あぁ、申し遅れてしまいました。
私の名前はイスカリオテ。
イスカリオテのユダでございます。
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