イクセリオン・サーガ

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イクセリオン・サーガ

「此の左手に地上あり 其の右手に冥府あり 深炎の導き手よ 煉獄より来たりて 一切を 灰燼に帰せ 真紅の大罪」  7節詠唱をもって、煉獄の炎を生成。  熱量を与えた結果としての燃焼ではなく、物体の存在そのものを揺らがせ燃やす。物理学の理論体系とは根本からして異なる、抽象概念としての炎。  詠唱によって呼び出したそれを、目の前の空間に叩きつける。  破壊の衝撃が吹き荒れ、その余波だけが俺の頬を掠めて散っていく。  だが、【断絶の境界】は、そんな攻撃を受けても小揺るぎもせず、先ほどと何も変わらずにただそこに在った。 「だったら……、起導(アウェイクン)!」  魔装具――アーティファクトを召喚し、両手でがっちりと握りしめる。  古代の英雄が使用した宝具、それを魔導の力によって疑似的に再現した魔装具。  その中でも最高ランクに分類される、大剣の形をしたそれに、続けて魔力を込めはじめる。 「反魂(リバース)……、重ねて、反魔(リバース)」  2つの高位魔術を直列に繋ぎ合わせることで、対象に「死」「崩壊」の現象そのものを直接打ちこむ、零式の禁呪を創造。  それを大剣に纏わせ、【断絶の境界】に向けて力の限り振り下ろす!  ガッッッ! という激突音。  だがしかし、それでもなお【断絶の境界】には傷一つ付けることができなかった。  拒絶された全ての魔力が跳ね返り、魔装具そのものを襲う。  その衝撃に耐えきれずに、大剣は根元からぽっきりと折れ、光の粒子となって掻き消えた。  くそっ、これでもダメか……。なら次は! 「セイクリッドコフィン! ヴォイドオーバー! イクリプスバインド! ライジングレイ! アクアプリズン! クリティックスカーズ! ノヴァインフェルノ! アンチリボルト! エンドレスウィンド! バニッシュメントゲート!」  名を唱えるだけで魔法を発動するという、もっとも基本的でシンプルな魔術体系。  本来、ピーキーな効果を抑える代わりに、個人の才覚によらず誰でも安定運用できるようにという設計意図で構築されたそれを、意図的にぶち壊す。  1つ1つの魔法には、徹底的に俺流のカスタマイズを施してある。  それによって平均5倍程度の出力が可能になった魔法を、通常ならあり得ないほどの密度で、具体的には10個同時に炸裂させる……!
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