イクセリオン・サーガ

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 ◆ 「……み君! 和泉君!」 「う、あ……先生、俺、は…………」  すっ飛ばされていた感覚が、徐々に戻ってくる。  先生の助けを借りて、倒れていた身体を起こし、あたりを見回す。  そして、最初に目に入ってきたものは。  綺麗さっぱり消滅した【断絶の境界】と、そこに横たわる莉音の姿だった。 「俺……やったんですね」 「ああ、そうだよ和泉君。君は、成し遂げたんだ」  思わず目頭が滲んでしまい、熱いものがこみ上げてくる。  しかし、いつまでも感慨に浸っているわけにはいかない。 「莉音! 目を開けてくれ、莉音!!」  音も通さない【断絶の境界】が消え去った今、俺の声を遮るものは何もない。  まだ目を覚まさない莉音に向かって、俺は力の限り声をあげて叫んだ。 「うーん……まだ眠いよぉ……。お願い、あと5分だけ……。『拒絶せよ』」  本来、自然災害的にしか発生しえないはずの【断絶の境界】を、ごく普通の1節詠唱で、あっさり張り直すと。 「おやすみ、なさい…………むにゃ」  再び、心地よいまどろみの中に落ちていった。 「莉音――――――――――ッ!!!」  かくして、100兆年に1人の天才と呼ばれる生瀬 莉音(いくせ りおん)は。  度重なる朝寝坊によって出席日数が足りず、本日をもって高校留年が決定した。  イクセリオン・サーガ 完
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