イクセリオン・サーガ

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「綴る――《破滅の一撃》」 「馬鹿な!? それは……固有魔法!?」  先生が驚くのも無理はない。俺がこいつを使えるようになったのは、つい先日の話。もちろん、先生の前で披露するのもこれが初めてだ。  固有魔法の発動に必要な呪文(スペル)を、高速に紡いでいく。  詠唱とは違い、スピードと精密な魔力コントロールが要求されるスペリング。その各段階を、1つずつ着実に潰していく。 「そんな……。和泉君は、まだ16歳だぞ……とうてい固有魔法を修得できるような年齢じゃ……」  知っている。固有魔法とは、あらゆる魔術体系の極致であり到達点。  1万人に1人レベルの才能を持った魔術師が、その半生を費やしてようやく修得できるかどうかの極みにある、とされていることを。  だが、それはあくまで先例の集合体にすぎない。  理論的に不可能だと証明されていないのなら、そのくらいの壁、ぶち破れなくてどうするよ……! 「スペル――エンド!」  はるか上空に、金色に輝く、巨大な光の槍が召喚される。  その内に宿るエネルギーは、通常の魔術の数千倍。  それだけのパワーが、【断絶の境界】を破壊するという、ただそれだけの目的のために地上に落下するようにセットしてある。  そして、さらに。 「綴る――《久遠の祝福》」 「固有魔法の……二重発動!? まさか、現実にそんなことが可能なのか……!?」  そもそも【断絶の境界】とは、ごくまれに発生する自然現象のようなものだ。  いつどこに発生するか、正確な予想は不可能。  そのメカニズムもほとんど解明されておらず、ただ1つ明らかなのは、既存のありとあらゆる物質や魔力体と比べても、まるで比較にならないほどの絶対的な強度だけ。  当然、いかなる過去の歴史書を紐解いても、【断絶の境界】を破壊できたという記述は存在しない。  それはつまり、通常の固有魔法で【断絶の境界】を破壊することはまず不可能であることを意味している。  固有魔法は極めて高難度の魔法とはいえ、過去に修得できた人物はいくらでもいた。  それをたった16歳で修得できたというだけでは、他の人から褒められはすれど、【断絶の境界】に立ち向かうにあたっては、何らアドバンテージにはなりえない。
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