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だからこそ、本当の意味で、かつて誰も成しえなかったことをやらなければならない。
そして俺が出した結論こそが、1人の人間が固有魔法を2つ修得すること、そしてそれらを同時に発動することだった。
「スペル――エンド!」
他の魔法の効力を数千倍に増幅させる。それが固有魔法の正体だ。
規格外の威力を持った固有魔法を、規格外の倍率で増幅させる。
それによって、《破滅の一撃》の威力は、通常魔術の数百万倍にまで跳ねあがる。
固有魔法の性質上、2人以上の人間が同じ場所で同時に発動しようとすると、スペリングが干渉しあって発動自体が不可能になる。
だがその理論的制約には、あくまで発動者が別々の人間ならばという前提条件がつく。
ゆえに、1人で2つの固有魔法を修得した俺であれば、普通の魔術師には不可能な、固有魔法の重ねがけによる桁違いの威力の魔術を【断絶の境界】にぶつけることができる……!
全ての発動準備を終えた俺は、最後の一言を口にする。
「降り注げ、《破滅の――――」
「そこまでだ、和泉君」
先生の手が、後ろから俺の口を塞いだ。
「君には本当に驚かされた。和泉君が学校で『100年に1人の天才』などと揶揄されているのは知っていたが、それがまさか、何の誇張もない、文字通りの真実だったとはね……。もしかすると、それでも過小評価かもしれないくらいだ。……でも、だからこそ、その才能をこんなところで潰させるわけにはいかない」
優しく、それでいて確固として口調で、告げる。
「完璧すぎる君の、唯一の欠点、とでも言おうか。君は、1人で何でもできるがゆえに、全ての責任を1人で負いたがる。いや、負わなければならないと思いこんでいるのかな。……その魔法、もし制御に失敗すれば、魔力回路が暴発。下手をすれば、君の命はないんだろう?」
……やっぱり、先生には全部お見通しってわけか。
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