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言いたいことはわかる。けれど私は首を傾げた。世界は情報なのだ、と言う説は把握している。現実に計算式が在り、人間が数値に置き換えられ、生体は磁石でくっ付いた膨大な細胞の集まりだ。脳内の伝達ですら電気信号で行われている。
しかし、ならば魂は情報なのだろうか? 私は「会長」疑問をぶつけることにした。
「なぁにー?」
「会長の自論だと、魂は情報ってことになりますが」
「そうなんじゃない?」
あっさり、会長は肯定した。けれども。
「だとしたら、死後の世界なんて存在しないし、魂も消えるってことになりますよね」
「そんなこと無いんじゃない?」
続けた私の言葉には否定した。え、だって情報なんでしょう? 情報ってことは、ハードが必要じゃないの? ハード、ここでは肉体だろうけれど、ハードが無いのにどうやって情報を定着させるの?
私が頭を疑問符でいっぱいにして会長を凝視していると「うーんとねぇ、」会長は説明し始めた。
「インターネットって在るじゃない」
「はい」
「アレも情報の集まりじゃない?」
「まぁ、ちょっと違う気もしますけど……」
でね、と会長は私を捨て置き更に持論展開し出した。
「会長……」
「……。言いたいことはわかるけどっ。……サーバって在るじゃない。
死後の世界をサーバって定義したらどう?」
私は、あ、と思った。何て言うか、急に胡散臭くなったと言うのか。私の視線が若干温度を下げたことなど気付きもせず、会長は話を途切れさせることも無い。
「たとえば、たとえばだよ? 魂が情報で在ったとして、」
「はぁ」
視線どころか声の温度すら下がった。が、会長はスルー。気が付かないのか、敢えて黙殺しているのか止め処無く自分のご高説を垂れ流している。
「どこかにこの情報を管理するサーバが在って、」
「はぁ」
「そこへPCでインターネットするみたいに接続していたら?」
「……肉体には、実際魂は無いってことですか?」
会長の言いたいことはこうだ。クラウドサービスみたいにデータを蓄積出来るサーバが在って、ここから魂をダウンロードしている、と。サイトを見るにはデータを呼んでPCに下ろす、コレがインターネットの仕組みだ。半ば呆れつつもきちんと返す。私も大概律儀だな、なんて。
「そ! で、寿命を迎えると、魂はサーバに戻るの!」
「まるでMMORPGの逆みたいですね」
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