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12月に入り、マイクの店があるプラザでも、季節の木々が売られる様になった。
ある日曜日の夕方、宿題も終わり、マイクとその木を眺めながら、雑談をしていた。
「彼女、やっぱり、返ってこないのか?」
「あぁ、、、元々無理だったんだ。 田舎町のお金持ちの娘でさ。 その町には彼女の家族の名前の付いた大きな病院もあるらしいよ」とその夏、短大を卒業して帰って行った彼女の事を話しているとき、、あの5人の子供達ちが、プラザで売られている木を見ているのに気がついた。
「あの子供達、よく見かけるんだけど、何してるんだろ?」
「お金、貯めてるんじゃないかな、そんな季節じゃない」
その日の夜、大学の裏にある僕が住むアパートの横のコインランドリーで、数年前、英語を教えてもらっていた先生にぐうぜん出会った。
「りょう、まだこの町にいたのね?」
「あと1年はいるよ、卒業するまで。 ジャッキー、なんでここに居るの?」
「もしかして、りょうもこのアパートなの?」
僕はその質問に、にっこり笑って
「また、ご近所さんだね」と答えた。
僕が進学の為の英語の学校を終えて、大学に通っていた頃、その先生は、僕が借りていたアパートの道を挟んだ向かいのアパートに1人で暮していた。
学生が多く住むその辺りのアパートは、春、夏、秋、冬のホリデェーシーズンになると、殆ど誰もいなくなってしまうのだが、テキサスの田舎から出て来ていたその先生はいつも1人で残っていた。 そして、僕もそうだった。
僕は、6ヵ月間、彼女が教える英語学校に通た。 彼女からは作文と文法を習った。 彼女は、普通のアメリカ人女性に比べると、細っそりとした華奢な感じで、とてもシンプルでどことなく時代遅れなデザインのワンピースのドレスをいつも着ていた。 物静かな彼女は、髪を肩と腰の間まで伸ばし、そのキラキラト光る栗色の髪は、いつもくしをちゃんと入れて、綺麗にしていた。 そして、笑うと可愛らしい、エクボができた。
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