12月の木

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他の生徒よりも少し早く大学の入学を確定できた僕は、3カ月間、テレビと本から英語を学び、できるだけ日本語を話さない生活をしていた。 たいがいは同じアパートに住むタイの留学生のアパートによくたむろしていたと思う。 もちろん、その英語学校は辞めたが、その後も、僕は彼女のアパートで開かれる小さなパーティに招待されたりした。 それと、1人で何もする事のない夜などは、ジャッキーと2人、彼女の部屋で古い映画を見ながら、ピザやチーズを食べたり、ワインを飲んだりしたこともある。 あと、彼女の親友のリサがそこにいる時もあった。 リサはその英語学校で会話を教えている先生で、小柄だが身体の線にメリハリのある、俗に言う金髪、青い目のプロポーションのいいアメリカン。 性格はジャッキーとは正反対の、いかにものカリフォルニアガールで、よく喋り、よく笑った。 それと、僕が18の時に付き合っていた年上の彼女にどことなくにていた。 ただ、僕には、その可愛らしいく、利発そうなリサがいる時より、物静かに笑うジャッキーと2人きりの時のほうが、何にも気にせず、自然体でいられたので、居心地がよかった。 僕が、 「今年もテキサスには、帰らないの?」と聞くと、 彼女は、 「No, 帰らないわ」と少し寂しそうに答えた。 「じゃあ、また今度、古い映画でも見ようよ」 すると、彼女は嬉しそうに微笑みながら、 「OK」とうなずいた。  クリスマス前の日曜日、時間を持て余していた僕は、マイクの店で時間を潰していると、あの5人の子供達が、プラザで売られている木々を、はしゃぎながら選んでいるのを見かけた。 彼らはその中でも1番大きな木を選んだようで、店の人がその木を持ちやすい様にネットを掛け、ひもを付けたが、その5人にはその木を持ち上げるのが、やっととゆう感じだったので、 僕はマイクに、 「ちょっと、トラック貸してくれないか? あいつ等、ヘルプが必要みたいだから?」と聞くと、 マイクは、ニンマリ笑って、 「早く、帰って来いよ!」と言い、鍵を僕に投げて渡した。 僕はそのトラックを彼らの横に停め、 「乗せてってやるよ」と声をかけると、子供たちは胡散臭そうに僕を見ながら、相談をしているので、 「このトラックは、あそこのピザ屋のだよ、心配なら、マイクって奴が店番してるから聞いてきなよ」と言った。
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