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紅林慶佑(くればやし けいすけ)は理科準備室に向かっていた。
高校に入学して早くも3ヵ月が経とうとしている6月下旬。『理科準備室』という場所が存在することは今の今まで知らなかった。
四階まで来たのは初めてかもしれない。誰もいない廊下はしんと静まり返り、いつもの学校とは違う空間のように思えた。
慶佑が普段使っている1年5組は一階南側の一番奥に教室がある。理科準備室は四階北側の一番奥、つまり自分たちの教室から最も遠い位置にあるらしい。
・・・・・・長い。教室を出て10分は歩いただろうか。この学校、敷地だけは無駄に広いからな。
窓の外では運動部が練習に励んでいる。その様子を横目に、慶佑は少しだけ歩くペースを上げた。
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