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ボカッ!!バキッ!!バスッ!!
「きゃいん!きゃいん!きゃいん!きゃいん!」
迂闊だった。
1匹の野良柴犬は、各駅停車の電車に乗客に紛れて乗り込もうとしたとたん、駅員に捕まえられて執拗に暴行を加えられていた。
ぷしゅー!!がっちゃん!!
ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン・・・
柴犬は逃れようと身を乗り出して電車の中へ逃げようとした寸前、虚しく電車のドアは閉まり、ズンズンと発車してしまった。
バキッ!!ボカッ!!バスッ!!
それでも、駅員どもは更に渾身の力で『憎き珍入者』である柴犬への暴行を加えていた。
この陰惨な光景を、駅のホームの乗客は無関心そうに見てみぬふりをしていた。
ある人は笑い、
ある人は「やっちまえ!」とエキサイトしている。
「保健所を呼べ!!」
執拗に柴犬を殴り付けていた駅員が、駆けつけた他の駅員に呼び掛けた。
・・・今だ・・・!!
柴犬は隙をついて、駅員の腕から離れようとした。
ぐっ!!
・・・しまった・・・!!
「この犬を逃がすな!!」
柴犬の尻尾に、駅員の腕が掴まれた。
「ぎゃいん!!ぎゃいん!!ぎゃいん!!ぎゃいん!!」
柴犬は、尻尾を引っ張る駅員の腕から逃れようと、必死に渾身の力を込めて前に行こう前に行こうと、重い身体を引っ張った。
ぶちっ!!
駅員の手から柴犬の毛だけを残して、何とか柴犬は逃げ出すことに成功した。
「ごるぁーー!!待ちやがれ!!この糞犬ー!!」
柴犬は、死にもの狂いで駅のホームの階段を転がるように駆け降りると、困惑する乗客達をスラロームして、駅員の待ち受ける改札口を必死に掻い潜って猛ダッシュで、駅から逃げ出した。
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