プロローグ

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ぼくの住む街はいわゆる地方都市で、過疎化寸前だ。 市の人口は第二次ベビーブームと呼ばれた1973年の約12万人をピークに、現在は約4万人にまで激減してしまった。 つまり、1/3にまで減少してしまった深刻な状況である。 当時は日本全国に公団住宅ブームが広がり、子育て世代を中心にこぞって、団地住まいを選択した。 ぼくの親もその筆頭で、高倍率となった抽選の狭い難関を突破して、ここに移り住んできたという。 だが当時の狂想曲も今は昔、現在ではぼくの同級生達は進学や就職に伴い、次々と街を出て行ってしまい、今はぼくの様な物好きと、彼らの親達だけが取り残されて暮らしている。 かつては夜の人口だけはやたら多いベッドタウンと呼ばれていたここニュータウンも、今や巷ではゴーストタウンなぞと揶揄されている始末だ。 ある民間研究機関が発表した試算では、2040年には1万人を割り込むであろうと算出されたことから、「消滅確定都市」に指定されてしまった。 まだまだ20年以上も先の話なのに、実に憂鬱な気分にさせられるニュースである。 これには昼行灯などと陰口を叩かれていた、時の市長も相当慌てさせられたと見え、さまざまな知識人に智恵を求め始めた。 そこに目をつけたあるアミューズメント・レジャー企画代理店が提案してきたのが、街ぐるみでその2040年後の世界を体現してしまおうというものだった。 すなわち、人口が消滅した跡の廃墟と化したこの街の未来を、現代の街にアレンジしてしまおうというのである。 ちょうど、昭和の産業建築物が世界遺産に認定されたりなんかしていたものだから、くだんの市長も面白い企画じゃないかと乗り気になり、早速市政の調整に乗り出した。
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