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「じゃあ、行くか」
先輩のいつもの台詞。変わり映えしないなぁ…。
「ん?なんか言いたいことあったら言え。今のうち」
わたしの微妙な表情に気づき、声をかけてくる先輩。
「いえ…。大したことじゃないんですけど」
でも一応素直に口にしてみるわたし。
「江戸時代の格好とかは、しなくていいんですね」
「当たり前だろ。何考えてんだお前」
思ったより結構馬鹿にされた。
「だって、お前何回か過去に行っただろ。あれの長距離版だぞ。エネルギーは消耗するし、それなりに大変だけど基本的なやり方は同じだ。その時代の人間から俺たちが見えるわけないだろ」
「ああ、なるほど」
納得する。前々回、わたしが思いっきり悲鳴をあげても連中は行為を止めようとしなかった云々ですから…、向こうからしたらわたしたちは存在してないんですね。
なあんだ。緊張して損した。
「こら、急に油断するな。言っとくけど、脅威は当時の生きてる人間じゃないぞ。俺たちが呪いの起源の場所に近づくことで、呪詛側に気づかれる確率が上がるだろうが」
?わたしは首を傾げた。
「その人たちは、生きてる人間に分類されないんですか」
「実際には呪詛がかけられるきっかけとなった出来事を見に行くわけだから、そこにも登場するだろうけど。でも問題なのは、現在その呪いを継続して機能させてるヤツだからな。それは霊的存在だから、警戒する方向が違う」
…なんか話がだいぶ複雑になってきた。
「それってわたしは、どうやって警戒すればいいんですか」
「お前に何かできるわけないだろ。余計なことしないで俺たちのケツにくっついてりゃいいんだよ」
更にもの凄い馬鹿にされた…。先輩のケツですか。そうですか。
「なんか言いたいことあったら言ってみろ」
「いえ別に何にも」
「大丈夫だよ。アキちゃんは俺が守るからね」
横からひょいと首を突っ込んでくるジュンタさん。ノリが軽い。
「お前ひとりの護りじゃ心許ないんだよ。俺と二人がかりでシールドかけてやっとってとこだ」
先輩はにべもない。でもジュンタさんはあんまり応えた様子でもないんだな。
「それってでも、俺がいないことには護りも足りないってことでしょ。じゃあ俺が護ってるも同然だよね、アキちゃん」
「…ぐぅ」
見えない背後で耐えかねたような苦しげなヘンな声が。わたしは振り向かずそっと声をかける。
「チサトさん、大丈夫ですか」
「…大丈夫。一瞬心臓に変な負担かかったけど」
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