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ジュンタさんがわたしの背中の下の方にそっと手を添える。おそらく先輩に気づかれないように。
かなり大声を出しているのだが、内容まではわからない。興奮して早口なのと、大勢がいっぺんに発声してごちゃごちゃしているのと、言葉が現在とはそれなりに違うのと、その全部のせいだと思う。硬直しつつ畦道からじりじり後退したわたしの傍を通り抜けて集団は鎮守の森の方へと去った。
「…あれ、何かわたしと関係あるんですか」
「勿論。お前の問題と関係ない場面には繋げない。お前の先祖はあの中にいなかったな、今。でも呪詛側の人間はいた」
「へぇ」
思わず驚愕する。すごい。あんな情報量でそこまでわかるんだ。
「男の人ばっかりでしたね」
「集落の重要なことを決める面子だから、どうしても男が多いな。ましてや物騒な議題だから…。女は意図的に遠ざけられてるのかも」
先輩はしばし黙って考え込んだ。ややあっておもむろに言う。
「多分、これから寄合所のようなところに行ってあのメンバーで話し合いをするんだと思う。俺は詳しい内容を知りたいから、そっちに行ってみる」
「わたしたちも行くんじゃないんですか」
あまりに険悪な空気なので怖じ気づく気持ちはあるが、そうも言ってられないだろう。
「いや、お前が今行っても出来ることは特にない」
先輩はきっぱり言った。
「本当に情報を取るだけだから。むしろお前が側にいると集中できない。その辺にガッツリしたシェルターを作ってやるからその中で待ってろ。ジュンタは置いてくから、護ってもらえ」
「やった」
これは勿論わたしの台詞ではない。先輩はすごい目つきでジュンタさんを睨めつけた。
「…やっぱり、こいつは連れてく。ジュンタ、お前だけ残れ」
「ちょっと待って下さい意味わかりませんよ」
二人がわぁわぁ言ってるが、わたしは特に入る幕もないのでしばらく放っておく。少し時間がかかったが、結局元の案の通りわたしを置いてジュンタさんを付けておくことで落ち着いたらしい。先輩はぶつぶつ言いながら場所を物色する。
「あんまり集落に近いのもなんだし…、あ、あれ、良さそうだ」
川のほとりに建てられた小さな祠を見つけ、近寄って行く。
「…うん、これ、お前の先祖と繋がりがあるな。悪くない。この側にちょっと結界張るから、お前そこに立て」
「こうですか?」
言われる通りに祠の傍に立つ。なんか、写真を撮るときみたいだな。
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