二話

40/41
99人が本棚に入れています
本棚に追加
/134ページ
学園から少し離れたところにあるここトゥエール付属病院はあまり生徒達からの評判はよくない。設備は最新式のものを取り揃え、医師の腕もピカイチな筈らしいんだけど… 「いやあ、男の子ってなんでこう発育がいいんだろうね~。程よく筋肉つく頃だし…合法的に触れるんだからこの職についてよかったとおもってるんだよ」 目の前で涎を垂らしながら語るのは金井結香(かない ゆか)先生。トゥエール付属病院の院長であり桜の担当医でもあるらしい。 「は、はあ…」 「でも院長って実際デスクワークばかりでさ、男子の体にお目にかかれる機会が少ないわけよ?私って ちょーっとだけ暴走しちゃうから指名もされないし…」 「そ、うなんですか…」 「でも桜ちゃんはね、なかなか生徒に指名されない私を選んでくれたのよ!いい子よね~もう少し肉はつけてほしいけど。」 桜の病室で延々と語る院長。ネコは飽きてポケットに入ったまま出てこないし、渕東は明後日の方向を見つめ、会話をなるべく聞かないように努めている。 「で、桜ちゃんの容態なんだけど…。」 緩んだ顔はそのままにカルテを持つと、青い光が院長の手を包むと、空中に文字が浮かんでくる。カルテの内容らしい。 「まあ体の方は心配する程でもなかったんだよね、軽い火傷と擦り傷とかくらいだったし。問題は…魔力が抑えきれてないらしくて、ジュエルが今にも割れそうなのよ。」 「それって…かなり危ないんじゃ」 「精神的ストレスが原因で魔力をうまくコントロールできてないみたいだから、そのストレスをなんとかしてあげれば正常になるはず。 ね、桜ちゃん。」 先生は自分の隣に座っている桜に声をかけた。俺はさっきから桜が気になっていたが、先生がまだ話しかけないでほしいとのことで話せずにいた。 「……」 「まあ、この通りずっと黙ったままで何も話してくれないの。でも小野塚くんとなら喋ってくれると思ってね。」 先生は三人でいた方がリラックスできるでしょ、と言い部屋を出て行った。 静かな病室で三人(と一匹)。二人はずっと無言を貫いている。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!