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カウンターに五席ほどと、小さなテーブル席が二つ並んだ狭い焼鳥屋。その一番奥の席で俺と修一は向かい合って座った。生ビールで乾杯した後、早速話を切り出す。
「おい、見せろよ」
俺の言葉に後輩は「え?」と目を丸める。
「だから、噂の彼女だよ。写真くらい、携帯にあるだろ」
完璧と言うくらいだからかなりの美人だろう。どれほどのものかと期待して待つものの、彼は「ありますけど……」とすぐに携帯を手に取ろうとはしない。
「なにもったいぶってんだよ。いいから見せてみろ」
先輩の立場を利用して高圧的に手を出した。ここに乗せろと言わんばかりに。
しぶしぶ内ポケットから携帯を取り出した修一は、小さな液晶画面に写真を表示させてからそれを俺の手の上に置いた。
画像を目にして違和感を覚えた。美人……なのか?いや、お世辞にも美人とは言い難い。正直に言えば中の……下、だろうか。期待していただけにその落差は大きい。
「へぇ。なるほど……」と言いながら考える。
見た目はそれほどでもない。それでも後輩が完璧と評価するのだから、彼にとって彼女が好みのタイプなのだろう。もしくは彼は彼女のことを外見では判断していないのかもしれない。つまり彼はその内面が気に入ったということか。
「じゃあさ、お前、彼女のどこに惚れたんだよ?」
「どこって……」と彼は照れながら逡巡する。
「例えば見た目とか、性格がとてもいいとか、料理が上手いとか……」
言っている途中で「ああ」と修一が口を挟む。
「料理は彼女、全く出来ないんです」
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