第1章

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「なんだ、そうなの?」 「はい。だから一緒に外食はよくするんですけど、彼女、食べ方がすごく汚いんですよね」  苦笑を浮かべる彼に「そうなんだ」と同情するように肯いてみせる。 「あと、彼女は怒りっぽい性格なんです。それに上から目線で命令するし。おまけに……」 「ちょっと待て」と今度は俺が修一を遮った。 「お前の話を聞いてるとさ、とても完璧だとは思えないんだけど」 「え?なにがです」と彼は不満顔を見せる。 「だから、怒りっぽい上に上から目線。料理はできないし食べ方は汚い。正直見た目もそれほど良くないし。完璧どころか欠点だらけじゃないか」  その言葉に「なに言っているんですか」と修一は真顔で熱弁をふるいだした。 「そこがいいんじゃないですか。僕は怒ってくれる女性のほうがいいんです。強くリードしてくれるところなんか特に。料理だって僕は外食のほうが好きだから、出来ないほうが都合はいい。食べ方は汚いけどぱくぱくとよく食べてくれるし。ダイエットばかりするよりもよっぽどいいですよ。それに、僕は一般的に美人といわれる女性は苦手なんです」  十人十色、人の好みは千差万別だ。第三者の評価はどうであれ、自分の好みにぴったりはまったからこその〝完璧〟という評価なのだ。そういう意味で、修一は幸せを掴んだということになる。あまり羨ましくはないが。
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