極上肉

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 呼び鈴を押しても反応はない。電話も、もう一度だけ確認のためにかけたが、やはり繋がらなかった。  あらかじめ内緒で作っておいた合い鍵で部屋に入り込む。すると、猛然と一匹の子豚が駆け寄って来た。  飛びかかってこようとする子豚を蹴り飛ばし、台所へと向かう。放置されたままの食器や調理器具。その側にはレシピ帳が置かれていた。  中を確認する。  最終のレシピの材料と調理方法を見て吹き出した。  肉に肉を巻くなんて、なんというバカな調理だろう。だが世の中には、そういうことをする奴もいると判った。そしてその調理法は、新型ブランドの肉には決して合わないものだということも判った。  レシピ帳を見ていたら、蹴り飛ばした子豚が寄って来た。今度は飛びかかっては来ず、懇願するような目でこちらを見ている。 「アウトの調理法、見つけてくれてご苦労さん。でも、この食い方は個人的にはどうかと思うな。…お前は、出荷されたら、もうちょっとマシな調理をしてもらえるといいな」  ブヒーと、憐れっぽく子豚が鳴く。そいつを持ち込んだケージに詰め込み、私は、台所のレシピ帳を手に取ると、かつて人間だった時にそれを書き込んでくれた相手を連れてその部屋を離れた。 極上肉…完
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