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「あ、ちょっと…万智君じゃない?」
「え?本当だっ!…」
のろのろと歩く万智の目に見覚えの無い制服の女子生徒が駆け寄ってくる。
その声につい重かった筈の足を速め…逃げるかの様に歩き出した。
「万智君!万智君!どこ行くの!?」
「連絡全然くれないんだもん、会いたかったよ。」
騒がしく攻め立てるかのように逃げた筈の万智の後ろから声が追いかけてくる…
「ねぇ、万智君だよね!?」
確認が先だろ…
そんな言葉が片隅に過ぎりながら、ふぅ…と1つ息を吐いては笑顔を貼り付けた。
「あ、あぁ…久しぶりだね。」
振り返って確認した顔に見覚えはなかった。
けれど、先程までの憂鬱さを欠片もみせないようにっこりと微笑めば 向かいで2人は手を取り合って身を寄せた。
「ど、何処かに行くの?」
そんな質問に答える必要があるのか
煩わしい…と、浮かび上がる。
「少し、ね…」
目的地が無いとは言わない
煩わしいのは違い無いが、この退屈を紛らわせるなら別に誰でも良い…。
「一緒に遊ばない?」
「万智君と遊んだなんて言ったら皆羨ましがっちゃうよ!」
…皆…とは一体誰の事なのか…
誰でも良いと思った筈の気分は急速に堕ちていく。
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