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あの☆に虹の橋を架けて
容姿端麗、大和撫子、理想の彼女、絶世の美女、パーフェクトガール──
彼女を形容する言葉を例にあげれば、それこそ枚挙に暇がない。
そんな完璧な彼女には欠点があった。いや、それは欠点という生易しい言葉ではなく、致死量に達するように痛く、悶絶するように苦しい、ある大きな問題があったのだ。
「あの青い空に、もう一つの地球が見えるでしょう?」
その瞳の喫水線より上を指差して、彼女がそう言った。
当然、そんなモノは見えるはずがない。見えたら精神鑑定に強制連行されてしまう。
それでも、
「あなたには、見えないの?」
と濁りのない瞳で彼女が訊く。
「ごめんね。僕には見えない」
「青と白のコントラストに彩られたあの地球は、わたしだけに見える星なのね」
そう言った彼女が、とても倖せそうな笑みをうかべた。そして、どこまでも青い空を眺めながら、おそらく彼女にしか見えていないもう一つの地球を、その虹のような網膜に映しているのだろう。
そんな妄想に取り憑かれた彼女だが、もう一つの地球のことを他言していなかった。僕だけに、秘密を話してくれた。その秘密を分かち合うのは、僕だけの特権だった。
「あなたが、あの星にいる彼と同じ名前だからよ」
それが彼女が僕に秘密を打ち明ける理由だった。
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