あの☆に虹の橋を架けて

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 それはある日、という陳腐な言葉で始まるが、彼女の美しい口から出れば、それは珠玉の言霊だった。 「それはある日、空に虹を見たの。その虹の向こうに、もう一つの地球が在ったのよ」  その虹の架け橋と繋がった地球から、男の声が聞こえたという。 「こっちにおいで」 その好ましい男の声が、彼女を呼んだという。 「あなたがこっちに来て」  彼女は呼んだが、それは詮無いことである。 「君の星に繋ぐ虹を架ける」 「あなたの星に繋がる虹を架けましょう」  そして二人は、名と契を交わしたという。  そんな信じられない話を、彼女が僕にした。 「だからわたしは、あの星に繋がる橋を架けるの」  突拍子もない話だった。どうやって虹を架けるというのだろうか。 「そのためにわたしは、あの星に行くお金を貯めるのよ」  その日から彼女はその星に行くために、毎日雑炊だけを食べるような質素な生活を始めた。ビラ配りのバイトから、道路工事の交通整理までやった。  そんな美人なら芸能界で成功すると思うが、彼女はそれを仕事としなかった。 「だって、あの星が輝く空が見えなくなるから」
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