あの☆に虹の橋を架けて

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 彼女がそう言って、また青い空を見上げた。その顔の角度は、彼女の最も美しく見えるものだった。 「きっと都会に行ったら、空が濁っているから」  だから彼女は、いつも空が見える仕事を生業とした。 「きっとあの星が、本当の地球なのよ」  彼女は、この世界が汚れているという。そして、彼女にしか見えない星が、本当の地球だというのだ。 「わたしの瞳に映る地球を、君にも見せてあげたい」  あの淡碧の空にあるという円い星だ。現実を虚構に導き、妄想という夢を永遠にと願う、本当の地球である。  彼女は何年も貧しい生活を続けるので、婚期も遠のいていった。周りの大人は縁談を持ちかけるが、彼女は首を縦に振らなかった。その理由を知っているのは僕だけだ。  僕は彼女だけを見つめていた。  いつも仕事の帰りに、彼女が住むアパートの前を通る。 「あの星は見えるかい?」 「今日も、あの星は見えるわよ」  アパートの窓辺から、美しい彼女が答える。  それは倖せそうな顔だった。あの空のように澄み渡った表情だ。それに比べて、僕の心は暮れなずむばかりだ。
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