努力をしない人間

3/3
前へ
/4ページ
次へ
として、私の背中は何度も土にキスをした。 回ろうとしない身体が重力に従って落ちてゆく。 次第に疲労と背中の痛さが重なりあって呼吸がし辛くなる。 それでも、彼女は観ているだけだった。 「何時まで続ける気なの?」 背後で彼女はふと呟いた。 何気ないその言葉に答える力は、木枯らしを強く吹かした。 振り向かず、私は鉄棒を握り締めた。 駆け上がる脚の力を殺さず、空中へと放り上げる。 天地逆転。 身体を鉄棒に預ける。 一回転。着地。 「完璧だ」 私は、砂塗れになった紺色のダッフルコートを軽く叩く。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加