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「坂木さんは、どこ中だったの?」
「坂木さんは何部に入るの?!」
「坂木さん、彼氏いる~!?」
「あっはは…えっと…」
休み時間になると、あっという間に坂木圭の周りには人垣が出来た。
クラス中から問い合わせ殺到の人物は丁寧に一個一個応えていく。その一言一言が男女問わず歓喜の声へ返還されていった。
(…ホント、これからどうなっちゃうの?)
傍目で見た後、私は坂木圭との出会いを思い返した。
私の父さんは国内でも有名な化粧品メーカー桜花製薬の社長。
そして、父さんの下で働いていた部長の中年オヤジ…
この中年オヤジが仕事で多大なミスをしたようで、ある日私の家庭教師にやってきた。
突然やってきたのとタイミング悪くイライラしていた所為もあって、問題を全て正解しあろうことか「同年代ならまだしもオッサンなんか呼ばないで!」と父さんの前で大声で怒鳴ってしまった。
それ以来オヤジはこなくなった…
しかし、そんなことも忘れた時に父さんとやってきたのは…この女子―坂木圭だった。
状況が理解出来ない私に父さんが好き勝手に語る。
「父さんはお前の交友力の少なさに大変悲しい! だから、この元―坂木圭二、改めー坂木圭と交友を学び学校生活を楽しんでもらいたい!」
「え!?」
多大な仕事のミスによって中年オヤジだった存在は大手製薬会社の技術の結晶で、とびきり可愛い一人の女子高生へクラスチェンジさせた…
「これからよろしくね! 桜花澪…さん?」
とびきりの笑顔で手を伸ばしてくる愛らしい表情の女子だが、どうしてもオッサン時代の顔がチラついてしまう。
「いやいや、固いぞ! 華の女子高生なんだ! 名前で呼び合わないと」
父さん、お願いだから余計なことを言わないで!
「失礼しました、社長! じゃあ、改めて…よろしくね、澪!」
ホントどの声帯からそんな女子ボイスが出てくるの!?
「は、はぁ…」
笑顔を引きつらせながら私は可愛い女子(元オッサン)と握手し、この日から友達になった。
これが全ての始まり。
誰にも言えない秘密と、誰とも交わりたくない私と、社会生活と学生生活を梯子する彼女との慌ただしい日々が始まった…
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