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第5章 胸に抱えるもの(続き)
「お帰り。あれ? 買い物は?」
リビングで、のんびりとスマートフォンを繰る謙悟に迎えられ、
ようやく忍は手ぶらな自分に気が付いた。
「あっ、すまん。
ちょっと寄り道した先で夢中になり過ぎて、すっかり忘れた」
すぐ買ってくる。
忍は、慌てて部屋を出ていきかけた。ところが、
「忍」
呼び止められ振り返ると、浮かんでいた謙悟の苦笑が
ちょっとバツの悪そうな歪んだ笑みに変わり、
自分の頼んだ買い物は、キャンセルしてくれと言ってくる。
「えっ、なんで?」
思わず聞き返すと、謙悟は更に眉尻を下げた。
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