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第6章 埋まらない距離
居たたまれない週末を過ごした、翌日。
感情をもたぬ時は残酷なほど規則的に流れ、
容赦なく仕事という現実へと引き戻された。
しばらくどっちつかずの迷走をしていた台風が、
数日前にようやく進路を定め、
この朝、既に東海地方を暴風雨圏に巻き込んでいる。
だが、その行く先に当たっているはずの首都圏はといえば、
まだ多少生温い風が強い程度で、然したる影響は出ていない。
いっそのこと、今、ここで吹き荒れていてくれればいいものを。
オフィスの自分の席で、
子供っぽい恨み言を思い浮かべて、忍は窓の外に視線を投げた。
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