第6章  埋まらない距離

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だが、 「あの、打ち合わせ中に申し訳ありません」 遠慮がちなノックと共に現れた秘書らしい女性の言葉に、 彼らは、一気に、もう一つの現実を突きつけられる。 「実は、いよいよ台風が、こちらに接近しているようでして。 一部の電車も止まり始めているとの情報がありますもので……」 えっ……。 彼女の言葉に、立花と部下の中谷、そして忍も 異口同音に言葉を呑んで、窓に目を向ける。 灰色一色に染まった窓の外は、 吹き煙っている雨に、何もかもが白っぽく霞んでいた。
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