第6章  埋まらない距離

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「もしかして、早退許可おりました?」 さすがに少し顔をこわばらせた立花の問いに、秘書は小さく「はい」と頷く。 「それで、みんな帰り始めてるとか……」 ええ。半分くらいの方は既に。 そして、連絡が遅れたことを小さく詫びて、 秘書は、扉の向こうにそっと消えた。 それと同時に、立花が珍しく慌てたように テーブルの上のスマートフォンをいじりだす。 「いやぁ、なんかタイミングが悪かったみたいだな」 スマートフォンをいじりながら、立花がこぼす。 それに忍は、いつしか軋んでいた胸の痛みすら忘れて 仕事に没頭していた自分に、苦笑を浮かべた。
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