第5章  胸に抱えるもの(続き)

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「実はさっき、お袋から電話があってさ。 帰国してるのに、なんで連絡も寄越さないって怒られてな」 そして、この分だと恐らく、今夜は向こうに泊まりになると頭を掻く。 「だから、お前に電話しようと思ってたところだったから、丁度よかった」 そして、悪いが今夜の夕食は作れそうにないと、詫びてくる。 「そんなのは、気にしないでくれ。いつもは自分でやってる事だし」 「うん。じゃあ、これが済んだら行くから」 脇に置かれた、手入れしかけらしいカメラに小さく目を向けた謙悟に 「わかった」と頷く。 「じゃあ、俺、コーヒーだけ買いに行ってくる」 合い鍵は、そのまま持ってってくれ。 そして、謙悟の返事を背中に受け、忍は再びマンションを後にした。
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