第6章  埋まらない距離

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俺は、構わないよ。 忍は、さらりと言って笑顔すら向けた。 ところがそれに、彼女のほうが動揺を見せた。 「あ、でも私、迂回すれば帰れますから……」 まぁ、あまりよく知らない男と二人で帰途につくのも、 どこか気まずいものもあるのだろう。 しかし、そんな彼女の遠慮を、立花が心配そうに却下する。 「いや。こんなに天気が荒れるまで気付かなかったのは俺の落ち度だし、 帰る途中で何かあったら、それこそ俺の重大責任になっちゃうからさ」 こう言う立花の意図に、裏も表もないだろう。 それでも尚、小さく逡巡を覗かせたものの、 彼女も、さすがに首を縦に振った。 「じゃあ朝比奈、悪いが、お譲さんを頼むな」 うん。 忍が頷くと同時に、彼らは帰り支度のために テーブルに広がった物を簡単に片づけて、会議室を出て行く。 その二人の背中を一旦見送り、忍も広げたデザイン画を ゆっくりと片づけ始めた。
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