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俺は、構わないよ。
忍は、さらりと言って笑顔すら向けた。
ところがそれに、彼女のほうが動揺を見せた。
「あ、でも私、迂回すれば帰れますから……」
まぁ、あまりよく知らない男と二人で帰途につくのも、
どこか気まずいものもあるのだろう。
しかし、そんな彼女の遠慮を、立花が心配そうに却下する。
「いや。こんなに天気が荒れるまで気付かなかったのは俺の落ち度だし、
帰る途中で何かあったら、それこそ俺の重大責任になっちゃうからさ」
こう言う立花の意図に、裏も表もないだろう。
それでも尚、小さく逡巡を覗かせたものの、
彼女も、さすがに首を縦に振った。
「じゃあ朝比奈、悪いが、お譲さんを頼むな」
うん。
忍が頷くと同時に、彼らは帰り支度のために
テーブルに広がった物を簡単に片づけて、会議室を出て行く。
その二人の背中を一旦見送り、忍も広げたデザイン画を
ゆっくりと片づけ始めた。
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