第6章  埋まらない距離

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「どうぞ」 ビルの地下にある駐車場で愛車の助手席を開き、彼女をエスコートする。 「ありがとうございます」 畏まった様子でシートに滑り込んだことを確認し、ドアを閉じる。 そして運転席へと周りながら、忍は、ゆっくりと深呼吸をひとつした。 まだ仕事の延長だから。 心の中で、短く自分に言い聞かせる。 「さあ、じゃあ行こうか。 もしかすると、この天気で多少渋滞してるかもしれないけど」 エンジンをかけながら声をかけた隣から、 彼女の緊張が漂うように伝わってきた。
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