第5章  胸に抱えるもの(続き)

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駅前までの道のりを再度歩きつつ、 たった今の自分の態度に不自然さはなかったと、心から思いたかった。 実際、昔から忍が、寄り道先で見つけた何かに夢中になり過ぎたり、 浮かんだアイデアで頭が一杯になったりで、 本来の目的を忘れることは、決して珍しい事ではない。 そして忍自身、謙悟の姿を目にして我に返ったと同時に、 出来るだけ平静を装いもした。 だが、やはり謙悟は、明らかに何かを察したに違いない。 そして、彼の唐突な実家帰りが偶然の事実かどうかは定かでないが、 恐らく咄嗟の彼の気遣いが、そこになかったはずもないだろう。
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