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再び伏し目がちに曇る彼女の顔に、忍は小さく焦燥を憶えた。
自分まで、彼女から笑顔を奪うなんて――。
だから、とにかく彼女の微笑みを取り戻したかった。
「そんなに難しく考えることはないよ」
俯いた彼女を視野に感じつつ、忍の声が自然と優しくなった。
「要は、切なくても、愛しくても、
『恋』って、結局は隠し切れないエゴじゃない。
だからその熱い想いは、何かと溜息をつかせる。
そんな焦がれる胸が相手の温もりを感じると、
心に得も言われぬ艶が浮かばない?その温もりが体温なら、尚更さ」
はあ……。
忍の言葉を噛みしめるように、彼女は俯けた眉根をわずかに寄せる。
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