第6章  埋まらない距離

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「でも、私、あんまりそういう経験もないし……」 「恋ってさ、経験値や年齢じゃないと思うんだ。 恐らく何度したって、『恋』をしてしまえば、その想いに大差はない。 同じように誰かを好きになって、同じように胸が焦がれて、 想いが通じ合えば同じように幸せになるし、 破れれば同じように辛く苦しくなる」 「つまり、十歳の恋も二十歳の恋も同じってことですか?」 想いはね。 忍は、洗うようにフロントガラスに降り注ぐ 雨の向こうに連なる、テールランプの帯に目を向けたまま言う。 「でも、艶が違う」 艶……?  彼女の顔が、ゆっくりと自分に向けられた。
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