第6章  埋まらない距離

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彼女は、恋をしているんじゃないのか? 恋をしていれば、思い出すだけで、誰しもが甘い幸福感に 酔えるはずのシチュエーションに、どうして彼女は、こんなに苦悶する? それとも今の恋は、そんなに苦しいものなのだろうか。 ならば、僕が――。 そんな自問が、自然と忍の言葉となり口を突いていた。 「少し大胆に、我が儘な恋をしてみるといい。相手は誰でもいいから」 「えっ? 我が儘……?」 戸惑いを浮かべた彼女の顔が、忍の目の前に戻ってきた。 それに彼は、静かに頷き返す。
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