第6章  埋まらない距離

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~ * ~ まるで、日本列島の南岸を嘗めるように上がってきた台風が、 いま、丁度、まん中あたりを通過しようとしていた。 「来たわねぇ」 衛星画像の映し出されるテレビ画面を見ながら、那々が唸るように呟く。 「今後台風は、やや速度を速めながら、 今夜には、関東地方に再び上陸する見込みとなっています」 真面目が服を着ているかのような気象予報士の言葉に、 那々は、「うぅーん」と唸りながら窓辺へと歩み寄った。 しかし、申し訳程度に広がる階下部屋前の小さな庭木も、 まだ、そんなに激しく揺れている様子はない。
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