第5章  胸に抱えるもの(続き)

6/13
前へ
/38ページ
次へ
そもそも、やっと恋い焦がれた恋人を見つけたと思った矢先に、 偶然と流れだったとはいえ、謙悟と同居する羽目になってしまった。 その上、彼女に関する事では、 どうやら考えていたよりも遥かに自制が利かず、 心が揺さぶられてしまうようだ。 現に、彼女の想い人の存在に、ここまであからさまに動揺した自分がいる。 こんな状態で、本当にあの勘の鋭い二人の旧友たちの目を 誤魔化し続けられるものだろうか。 悶々と考えながらマンションに戻り、 リビングのテーブルにコーヒーの入った袋を放りだすと、 忍は、乱暴にソファに座って大きくため息をついた。 いや、一番の問題は、本当に自分は彼女を振り向かせることができるかだ。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加