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彼女は、あの男に恋をしている。
しかし自分は、そんな彼女の気持ちを振り向かせる術を
何一つ持ってもいない。
いやそれどころか、仕事絡みだったとはいえ、
彼女の今の恋を煽るような事まで、けしかけてしまった。
濃厚なセックスの翌朝に、匂い立つような艶だよ。
恋い焦がれる相手となら、自然とそうなる夜だって一度や二度あるだろう?
忍は、再び大きくため息をついて、頭を抱え込んだ。
何をやってるんだ、僕は……。
自分の愚かさと情けなさに、言い様のない腹立しさがこみ上げる。
「くそっ!」
苛立たしげに髪を掻き乱し、忍は、乱暴に背もたれに上体を投げ出した。
そして再び彼の大きなため息が、ガランとした広いリビングに消えていった。
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