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結局、この日は、何ひとつ手には付かなかった。
頭の中を巡り続ける後悔と苛立ちをどうすることも出来ないまま、
気付けば、部屋は暗闇に沈んでいた。
そして、ソファの上に放り出されたままの携帯電話は、
いつの間に来たのか、着信を知らせて小さな光を点滅させている。
忍は、のっそりと携帯電話に手を伸ばした。
『週末、やっぱりこっちに居ることになった。
月曜に、出版社と打合せをしてから戻る』
謙悟からの短いメールを読み、忍は、更に短い返事を送る。
『了解』
そして送信してから、「ゆっくりして来い」の一言すら
付け加えなかった自分に、またも溜息が零れ出た。
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