第5章  胸に抱えるもの(続き)

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結局、この日は、何ひとつ手には付かなかった。 頭の中を巡り続ける後悔と苛立ちをどうすることも出来ないまま、 気付けば、部屋は暗闇に沈んでいた。 そして、ソファの上に放り出されたままの携帯電話は、 いつの間に来たのか、着信を知らせて小さな光を点滅させている。 忍は、のっそりと携帯電話に手を伸ばした。 『週末、やっぱりこっちに居ることになった。 月曜に、出版社と打合せをしてから戻る』 謙悟からの短いメールを読み、忍は、更に短い返事を送る。 『了解』 そして送信してから、「ゆっくりして来い」の一言すら 付け加えなかった自分に、またも溜息が零れ出た。
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