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人を強引にトイレに引っ張りこんで、あんなやらしいイタズラするから、そういうことになるんだ。
「あ、そういや、なんで、俺がトイレにいるのわかったんだ?」
あれすげぇ偶然すぎるだろ。
いっくら頭の良い秀才眼鏡だって、あれだけ騒がしい居酒屋の中で俺の足音が廊下から聞こえてきた、なんて超人的な聴力は持っていないし。
「電話があったんだ」
「あ? …………あっ! 元カノ?」
「あぁ」
あの時、廊下でスマホをいじってて酔っ払いとぶつかって絡まれてた元カノ。あの電話の相手が。
「はぁ? おまっ! 元カノと連絡先交換してたのかよっ!」
最低だ。
最悪。
この浮気者。
マジで泣かせてやるからな。
「違う。俺は知らない。向こうが勝手に調べたんだろ。彼女と同じ高校の奴が何人かうちの大学いるし」
元カノと玄は頭の良い進学校へと入学する予定だった。
玄だけはその道から外れたけど、彼女はそのまま進学で有名な高校へ進み、お嬢様でもいそうな短大に行って秘書へ。
だから玄のいる大学に元カノと同じ高校出身の奴もたしかにいるかもしれない。
そこからどうにかして玄の連絡先を入手することも不可能なわけじゃない。
「一度だけ、電話来たしな」
「はぁっ?」
思わず声に力が入った。俺はそんなん知らねぇ。
「もう一回付き合えないかって言われたんだ」
「は、あぁぁっ?」
もっと声に力が入る。
なんだそれ、そんなの俺は全然聞いてねぇぞ。
たしかにお互いの全部を知ることはできないかもしれない。
俺だって会社のことをお前に話しはするけど、お前にその全部は話さない。
でも、これはさすがに言うだろ、フツー。
「怒るなよ」
怒るだろうが。
「断った、即」
「……」
「好きな奴がいるからって。そいつ以外は一切考えてない。今も、これからもって」
「!」
今年の夏、西瓜片手に帰ってきた俺が受けたプロポーズの言葉が頭をよぎって、頬が強い酒でも一気飲みしたみたいに熱くなる。
「で、その彼女から電話があったんだ。さっき、居酒屋で」
「……」
「お前があそこで忘年会だって知っていて、うざいとわかっていながら、俺もあそこで飲み会を開いた。初めて幹事なんてやったよ」
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