忘年会篇  第1章 二十歳の冬

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「すみませーん、道混んじゃってて」 通された個室 ずらっと並んだ料理と そして、女が五人。少し長いテーブルに一列に並んで座っている。 (すげぇ可愛いだろっ! 秘書さんだ! ひ・しょ!) 大俵さんが耳打ちでそんなことを口走ってから、また、ニカーっと笑っている。 「合コンだぜっ! 木砂!」 忘れてた。 この人、酒大好き、宴会大好き、そんでもって、ものすっごい女好きなんだった。 「っつ、つか! これ! コンパじゃないっすか!」 「んあ? コンパ忘年会だ。そのほうがいいだろ?」 よくねぇよ。 全然、全っ然、よくねぇ。 同じ店に玄がいるんだぞ。 そんなん大俵さんが知っていたわけじゃねぇし、言えるわけねぇけど。 あいつがここに乱入することはないだろうけど、でも、これ、バレたら……か、考えるだけでもゾッとするんだけど。 い、生きた心地がしねぇ。 酔えるわけがねぇ。 「こんばんはーっ!」 女五人、しかも、けっこう可愛い。 秘書って言ってたか? 大俵さんの知り合いにしてはけっこう上品じゃねぇ? ザ、ガテンって感じだから、もっとこう派手な感じの……。 「あ?」 俺の前の席に座っていた女、歳は同じくらい。 他の四人に比べてもダントツ可愛くて、人形みたいで、グラビアアイドルにいそうな感じの女。どっかで見たことがあるような、ないような。 「あっ!」 「あ! あれ? もしかして」 嘘……だろ。 俺が思わず声を上げたら、そいつもピピッと通信で察知したみたいに俺のことを思い出した。 「あっあんた!」 「戸津田君の」 信じられねぇ偶然、合コンの席に、玄の元カノがいた。
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