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短く刈られた黒く固い髪。彫りの深い顔立ちなのに、口許に浮かべた微笑が雰囲気を和らげて。少し下がり気味の目元にある泣きぼくろが、色気をかもし出している。
その薄い緑の瞳の奥は、一体何を考えているのやら。
「直にお声をお掛けする無礼をどうぞお許しください。国王陛下からのご伝言をお預かりしておりますゆえ」
色めきだってわたしを庇う様に立つ公爵夫人達にも礼を取りながら、中佐が要件を話す。
「ま、まぁ。国賓であるのにわざわざご伝言など……」
公爵夫人が戸惑いながらも中佐が直に挨拶しやすいように、身体をずらす。
本当に抜け目のない人だわ。そんなこと言われたら、彼を邪険には出来ないもの。
座ったまま彼の方に身体を向け、手の甲を差し出してキスを受ける。
騎士の挨拶なのよ。
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