3人が本棚に入れています
本棚に追加
中学への通学路。
毎日毎日、決まった道を通る。
寄り道せずに、いつも通り。
その日、友達と喧嘩した。
いつもはふたりで帰る道を今日はひとり。
ふと思い立って、
最初に右に曲がる角を左に曲がってみた。
同じような家が並ぶ道。
サザンカのある家の角を今度は右。
そのまま右に左に、
気まぐれに曲がってみる。
塀の上の猫にこんにちは。
吠えてきた犬にあっかんべー。
いつもとは全然別の風景にわくわくする。
気が付いたら道は上り坂になっていた。
次第に家は少なくなり、
登り切ると公園に出た。
「うわぁーっ」
眼下にはひしめき合う家々。
その先の海に沈む真っ赤な夕日。
……明日。
友達も連れてこよう。
あんなに沈んでいた心は一気に軽くなっていた。
――道に迷って帰るのがすっかり遅くなり、
両親にがっつり怒られたのは内緒だけど。
最初のコメントを投稿しよう!