少女の悩み、僕の願い

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僕のクラスには天使がいる。 勿論、そう例えているだけで、本物の天使じゃない。 けれどそれ以外に彼女を表すのに相応しい言葉を、僕は知らない。 天使の名前は天宮凛。 飛び級で13歳にして高校一年になった天才少女。 彼女が優れているのは頭だけじゃない。 その容姿もまた、見る人の心をつかむ愛らしさがある。 ツインテールにしているうっすら水色の髪は触るととても心地よく、僕を含めたクラスメートはついつい彼女の頭を撫でてしまう。 くりっとした琥珀色の瞳に戸惑いの色を浮かべて抗議する姿がまた可愛らしいし、彼女の頭の位置が撫でやすいのもそうなってしまう理由かもしれない。 けれど、一学期が終わろうとしている今も彼女を天使と表現するのは僕だけだ。 他のクラスメート達は皆口を揃えて彼女を 「可愛くない生意気なお人形」 と、呼ぶ。 それは単に見慣れて飽きてしまった人もいれば、年下なのに甘えようとしないところもあるのかもしれない。 結局皆は、天宮さんを都合の良いペットかマスコット程度にしか思っていなかったんだろう。 僕自身、彼女の秘密を知らなければ皆と同じになっていたかもしれない。 天宮凛の秘密。 それは、夢がないこと。完璧な彼女だからこそ抱えてしまった悩みであり欠点だ。 周囲の、特に両親からの期待に応えようと努力し続けた結果、彼女は自分でやることを決める意志が弱くなってしまった。 自分を押し殺してまで、褒めてもらうためだけに努力し続けてしまった為に起きた悲劇。 撫でられたとき、抗議するのが戸惑いながらだったのはそのせいだった。
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