第1章

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茉莉花が乗り合わせていた時を狙い澄ますかのようで気味が悪いが、自分が忘れたことにも気付けないのだから、処置なしだ、気をつけようがない。 最初の頃は恐縮しながら連絡をし、航空会社の方も対応を聞いてきたが、ある回数を超えた頃から、慎の指示を仰ぐことなく勝手に遺失物を届けるようになった。 メッセンジャーとなったのは茉莉花だ。 「お忘れ物です、尾上様」 「よく私だとわかったね」受け取りながら感心の意を伝えたが、彼女は氷のような笑みで応えた。
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