第1章

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容姿淡麗、才色兼備。 成績は常に学年トップの生徒会長は、他学年からも愛され、教員からも頼りにされる存在だった。 思えば、彼女とは小学校からずっと一緒だった。何度もクラスは同じになったし、今も同じだ。 黒髪のポニーテールがよく似合う、清楚な子。俺は彼女のことが好きだった。 好きだったからこそ、かもしれない。 俺は彼女と、一度も話したことがなかった。 あのやわらかな笑顔は、俺に向けられたことなんて、なかった。 (遅くなっちまった) 冬休みに向けて、図書室を整理するという名目で全学年の図書委員は駆り出された。 名のみではあるが、委員長としてそれなりにやらねばと思い、率先して働いてはいたが、終わりが見えない。 「委員長ー。下校時間過ぎてるしそろそろ帰ろうぜー」 「先生には下校時間過ぎてもいいって言ってただろ?」 「そんな真面目にやんなくてもいいだろ?な?」 何人かは既にギブアップし、読者をしていた。 「わかったよ。残りは少ないし、俺、やっとくから先帰ってくれよ」 他の委員は先に帰して、残り少ない本をあるべき場所へと戻していく。 外は既に暗く、外灯がぼんやりと光っていた。 俺は手早く作業を終え、図書室を後にする。今日の夕食は何だろう、と廊下を走る。 ふと、その時、違和感を覚えた。 窓の外、校舎裏の動物小屋の前に誰かがいる。 下校時間は、とっくに過ぎているはずだ。 (あれ?あのポニーテール…) 目を凝らす。 (生徒会長だ) ベージュのコートを着てはいるが、寒そうにしている生徒会長が小屋の中に入っていく。 俺は下駄箱へと急ぎ、校舎裏へと向かった。 別に会いに行ってどうこうしよう、なんて考えはなかった。ただ、なんとなく、気になった。それだけだった。 それだけだったんだ。 だから、こんなことになるなんて思ってもいなかった。 小屋の中に佇む生徒会長の足元に、動物たちが横たわっている。 小屋にある大きな窓ガラス越しに見たその光景に、俺は息を呑んだ。 ガラス越しでも分かる、あの可愛らしい動物たちが死んでいるのは。
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