Memory.1 【別れの挨拶、笑顔の旅立ち】

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心から家に帰りたい気分なのだが、もう来てしまったものは仕方がない。 何が何でもこいつを捻じ伏せて平穏を取り戻して私は一日寝るという悲願を達成するんです。 「...願い、ですか。今のところは僕と結婚して欲しいという願いの他ありませんが」 少しだけ考え込んでいた吸血鬼はなぜかそんな下らない願いに達してしまったのは理解できなかった。 今なら何でも叶うのに。今までの人たちはみんな願ってきたのに。 初めての出来事に戸惑いながら少し俯きがちだった顔を上げると、吸血鬼と目が合った。 先程はたいして見る暇もなかったが、改めて見れば端麗な顔立ちに綺麗な瞳。 だけど先程の願いだけはどうにも快諾出来ず、私は彼という人物が本当に謎になった。 「くどい。もっと...もっと他にあるでしょう。金が欲しいとか一生遊んで暮らしたいとか憎い人を殺したいとか!」 今まで自分が言われてきた願いを相手に強要するつもりはないが、つい昔の事を思い出して声を荒げてしまった。 小声で「すまない」と言って彼を合わせていた眼を斜め下に逸らした。 「つれないね、過去に何かあったっぽい所を見るとあの村の神様って言うのは納得できないけれど」 彼は喉を鳴らしながら見開いていた眼を細めて笑ってその笑顔のまま私と目を合わせた。 いきなり彼の顔が視界一杯に入り、彼の屈託のない笑顔に私は目を見開いた。
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