Memory.1 【別れの挨拶、笑顔の旅立ち】

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小首を傾げて聞いてきた吸血鬼に憐れの目を向けて、短くため息をついた。 「吸血鬼が人を頻繁に襲うようになったらしくて。困るって我儘な村人が言うんですよ」 私的にはあんな村人別に好きなだけ困ってくれてもいいんですけれど、供え物が貰えないと破壊神さんが好きな林檎が来なくて困るから。 「ふーん...それで君みたいな若い女の子まで駆り出されるんですね、神界も大変だな」 若い、なんて久しぶりに言われた気がする。ざっと何百年振りだろうか。 そうか、この見た目だから吸血鬼からしたら私は年ごろの女の子くらいにしか見られていないのか。 「これでも一応三千五百歳です。崇めろ」 私がさらりとそういった後に、吸血鬼は目を見開いてまた笑った。 良く笑うやつだな。見た目と本当の歳がミスマッチすぎるから誰にでも驚かれるのは慣れているけど全く失礼だと思う。 「そりゃあ神格が高いわけだ、ますます欲しくなっちゃった」 悪戯そうに笑みを浮かべている吸血鬼を無視して本題に戻る事に。 「他に、ここら辺にいないんですか吸血鬼は」 「あれ、僕の事は見逃してくれるの?」 「死んでもいいって言ってるやつ退治しても目覚め悪いし。害なさそうだし」 近隣の吸血鬼を討伐するほど村人にそこまでしてやる義理はないが、破壊神さんが大切に思っている村だから。 さっきはイナゴがなんて言ってたけど本当は深い傷を負って今の村にいるんだろうから。
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