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今の村をあの人は、大切にしているから。自分の休暇そっちのけで村に残してきた思いの方が強まっていた。
「僕と取引、する?」
言葉を理解できなかった私は「取引?」と吸血鬼が言った言葉を反復して聞き直してしまった。
いきなり取引だなんて、まず何を取引するのだろうか。
「...取引?何と何をですか。貴方が消えれば村人は両手を上げて喜んで私の下僕になると思うんですけれど。そして一生の休み、至福ですね。想像するだけでわくわくします」
わざとらしくそう言っていつもの作り笑顔で笑うと、吸血鬼はにっこりと微笑んだ。
...さっきの笑顔の方が私は普通に好きなんだけどな、なんて本人に言うとうざくなりそうだから絶対に言ってやりませんけど。
「僕はその襲った吸血鬼の所まで案内して退治まで手伝う。君一人だといささか不安ですしね、それに将来のお嫁さんのためなら面倒くさがらずに僕も頑張るよ
と、言うことで君は吸血鬼を倒す口実に、僕と旅をして少しだけ村から解放される。ゆっくりいけば君の言う休暇になると思うけど。
下にいる子もなしで僕と二人きりでが条件だけど。どう?」
ところどころ突っ込みを入れたい気分だったが、どうにか抑えて冷静に話を最後まで聞いた。
「下の奴ともおさらばでか、いいですね!すぐ行きましょう吸血鬼狩り!」
冷静に考えようとはしたがやはり欲望には勝てずに即決してしまった。
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